「私だけを見て」と思ってしまう夜――初めての恋が、私の中で黒く見える理由。

初めての恋は、きれいなものだけではありませんでした。
恋愛をするのが初めての私は、彼に会いたいという強烈な感情が、だんだん「どす黒い、邪悪なもの」に感じてきました。
恋はもっと、可愛らしいものだと思っていました。
胸がきゅんとして、少し照れて、幸せが増えていく。
そんなイメージを、私はどこかで信じていたのです。
でも現実の私は、会いたい気持ちが強すぎて、胸が痛くなるほどで、日常の輪郭がぼやけていきました。
彼と一緒にいる時だけ、私の呼吸が深くなる。
彼の返信があるだけで、その日が保てる。
そういう状態になってしまうと、恋は甘いだけではなく、私を支配するものにもなっていくのですね。
私は45歳になって、ようやく恋の入口に立ったと思ったのに、入口の先にあったのは、私が知らなかった自分でした。
彼がいない日常が、急につまらなく見えてしまいます。
彼と一緒にいる時以外の日常が、つまらなくて仕方がありません。
家庭のことも、仕事のことも、二の次になっています。
私は都内の美容院で働いていて、毎日お客様に向き合う仕事をしているのに、手元は動いていても心だけがどこか違う場所にいる感覚があります。
家でも同じです。夕飯を作り、洗濯をし、息子たちのことを気にかけながら、私の頭の中では「次はいつ会える?」が繰り返されています。
日常が薄くなると、人は危うくなる。分かっているのに、止められません。
「私は何をしているのだろう」と思うほど、彼に心が引っ張られていきます。
私はきっと、今まで心を殺して生きてきた反動で、感情の針が一気に振り切れているのだと思います。
夫との会話が「どうでもいい」と感じてしまう自分が怖いです。
夫との会話は、表面上は普通にしています。
「おかえり」「お疲れさま」「今日どうだった?」そんなやり取りを、私はそれらしく返しています。
でも心の中では、どうでもいいと感じてしまう自分がいます。
それが一番怖いです。
私はずっと「夫婦だから仲良くしなければ」と思い込んできました。家庭を守ることが正しいと信じてきました。
その私が今、夫の言葉が耳を通り抜けていくように感じる。
これは冷たさではなく、私の心がもう別の場所に住み始めてしまった証拠なのだと思います。
夫のことが嫌いになったわけではありません。
でも、夫を男性として見られなくなっている自分は、確かにいて、その事実を認めるたびに、胸が締めつけられます。
独占したい気持ちが膨らんで、私は自分の中の黒さに怯えています。
そして何よりも、彼を独占したい気持ちが、どんどん膨れ上がってきます。
「私だけを見て」という感情も、私にとっては初めてでした。
この年齢になって、こんなふうに子どもみたいな願いが湧き上がるなんて、情けなくもあります。
彼には奥さんがいて、私は私で家庭があるのに。
それなのに私は、彼の時間も、彼の心も、できるなら全部欲しいと思ってしまうのです。
その欲しさが、私には邪悪に見えます。
優しい気持ちではなく、奪う気持ちのように感じるからです。
私は「大切にされたい」だけだったはずなのに、気づけば「独り占めしたい」に変わり始めている。
その変化が怖くて、私は自分の中にいるもう一人の自分を、見たくないと思ってしまいます。
邪悪に感じるのは、私が悪いからではなく「欠けていた分」が大きいからかもしれません。
私は自分の独占欲を、ただの悪として切り捨てたくありません。
なぜなら、その黒さの根っこには、長い欠乏がある気がするからです。
夫に拒絶され、心ない言葉を浴び、触れたい気持ちを恥に変えられてきた私が、初めて「求められる」「受け止められる」を知った。
その喜びが大きいほど、失う恐怖も大きくなる。
だから、独占したくなるのかもしれません。
私が邪悪なのではなく、長い間満たされなかった心が、急に満たされ始めて、バランスを失っているのかもしれない。
そう思うと、少しだけ自分を責める気持ちが緩みました。
ただ、理解したからといって、放っておいていいわけではありません。
私は「独占欲に溺れないための境界線」を、これから作りたいです。
私は今、彼に会いたい気持ちで頭がいっぱいになっています。
でも私は、息子たちを愛していますし、生活を守りたい気持ちも本物です。
だからこそ、恋の熱に任せて何もかも壊してしまう前に、私は自分の中に境界線を作りたいです。
彼を好きでいることと、彼を独占しようとすることは、同じではありません。
「会いたい」を全部ぶつける前に、一度深呼吸して、自分の寂しさを自分で抱きしめる時間を作る。
彼以外の場所にも、心が休める居場所を作る。
そうしないと私は、この黒い感情に飲み込まれて、彼を好きなはずなのに、彼を苦しめる人になってしまう気がします。
初めての恋は、私を生かしてくれました。
だから私は、その恋で自分を壊さないように、少しずつ自分の心の扱い方を覚えていきたいです。

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