MENU

近所の目を避けて、川の畔の公園へ――車内で揺れた私の心

土砂降りの雨の日に、私は傘を差して彼に会いに行った。

雨の日に外へ出ない私が、今日は出かけました。

今日は、彼に会う約束をした日でした。
外は土砂降りで、窓を打つ雨音だけで気持ちが沈みそうな朝だったのに、私の胸の奥だけが不思議と明るくて、自分でも少し怖いくらいでした。
私は車を運転しないので、雨の日に外へ出ることは今までほとんどありませんでした。
濡れるのが嫌というより、予定が崩れるのが怖くて、家にいれば波風が立たないと、いつの間にかそう思い込むようになっていたのです。
それでも今日は、彼に会いたい一心で、傘を差して出かけました。
足元の水たまりを避けながら歩くたびに、「私は本当に行くんだ」と心が現実に追いついていくようで、鼓動が少し速くなっていきました。

迎えに来てくれた場所は、家の近所のスーパーの駐車場でした。

彼は、私の家の近所のスーパーの駐車場まで車で迎えに来てくれました。
それだけで十分ありがたいのに、雨の中で待っていてくれたと思うと、胸がきゅっとなって、私は傘を握る手に力が入りました。
ただ、私の家は古く厳格な家だったこともあり、近所には知り合いだらけです。
何気ない立ち話さえ、すぐに噂になってしまうような空気があることを、私は子どもの頃から肌で覚えてきました。
だから、近くの喫茶店に入るわけには行きませんでした。
「見られたらどうしよう」という不安は、恋のときめきと同じくらい強くて、私は笑顔を作りながらも、目だけが落ち着かなかったと思います。

彼の「それならドライブしよう」が、私を救いました。

私が事情を言葉にする前に、彼はすぐに察したように「それなら、少しドライブしよう」と言ってくれました。
その一言が、私には救いでした。
説明しなくてもいい、責められない、急かされない。
そういう小さな安心が積み重なるほど、私は彼の前で呼吸がしやすくなっていくのです。
車は雨の街を抜けて、20分ほど走り、川の畔にある大きな公園に止まりました。
強い雨が降っているので、公園には誰もいません。
窓ガラスに流れる雨粒を眺めながら、静かな車内で彼の横顔を見ると、なぜか胸の奥が熱くなりました。
人がいない場所にたどり着いた安心と、ここまで来てしまった現実が重なって、私は言葉より先に、彼の存在を近くに感じたくなっていました。

車の中で、私たちは「最初のデートの続きを」してしまいました。

車の中で、二人は最初のデートの続きをしました。
抱き合い、キスをし、好きな気持ちを言葉にし合いました。
雨音が外の世界を遠ざけてくれて、まるで二人だけの小さな部屋ができたみたいで、私はその温度に身を委ねてしまいました。
私はずっと、夫から拒絶されてきたことを、平気なふりをしてきました。
けれど、平気なふりをすればするほど、心は乾いていたのだと、こういう瞬間に思い知らされます。
彼の「好き」という言葉は、ただ甘いだけではなく、私の存在をちゃんと見てくれている感じがして、胸の深いところに残りました。
一方で、私は大人で、家庭があって、守りたいものがあることも分かっています。
だから、車の中でそれ以上に進むことはできず、私はその境界線にしがみつくようにして、呼吸を整えていました。

3日後の約束が、今の私のすべてになりました。

私たちは、3日後にまた会う約束をして、その日は家へ戻りました。
雨の中を歩きながら、現実に戻る感覚が怖くて、私は傘の下で何度も彼との時間を反芻してしまいました。
もう、私の気持ちは完全に彼でいっぱいです。
今は、早く3日後にならないか、それだけを考えてしまっています。
家事をしていても、仕事の段取りを考えていても、ふとした瞬間に胸の奥が熱くなり、スマホを見てしまう自分がいます。
このまま気持ちが膨らみ続けたらどうなるのだろう、という怖さもあります。
それでも、雨の日に外へ出なかった私が、傘を差して彼に会いに行ったという事実だけは、私の心に残りました。
私は今、自分の人生の中で初めて、「会いたい」という感情に動かされて生きているのだと思います。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする