露天風呂付き客室で始まった一日目――「大切にされる」幸せを噛み締めた夜。

彼が選んでくれた「プレミアム」の部屋に、私は胸がいっぱいになりました。
彼が予約してくれたのは、客室に露天風呂がついているプレミアムプランでした。
扉を開けた瞬間、木の香りと落ち着いた照明が迎えてくれて、「ここが今日の私たちの場所なんだ」と思っただけで、胸が熱くなりました。
私はこれまで、夫婦旅行でさえ“私の希望”が丁寧に扱われることは多くありませんでした。
でも彼は、私が喜ぶポイントを先回りするみたいに拾い集めて、いちばん気持ちよく過ごせる形に並べてくれていました。
「私のために考えた」という気配が、部屋の隅々にまであるように感じて、私はその時点でもう、幸せに負けてしまいそうでした。
部屋に入った途端、私たちは言葉より先に抱きしめ合っていました。
部屋に入るなり、二人は自然に抱きしめ合い、キスを交わしていました。
誰に見られるわけでもない場所で、誰の顔色も気にしなくていい空間で、私は初めて「恥ずかしい」を置いてきた気がします。
私と彼に、はしたないという言葉はありませんでした。
それは、勢いで乱れてしまったという意味ではなく、私の中の“長い間押し込めてきた温度”が、安心できる相手の前でやっと溶けた、という感じでした。
私は彼の腕の中で、拒まれないこと、急かされないこと、乱暴に扱われないことのありがたさを、体の奥で思い知っていました。
「衣類の境界」がなくなるほど、心の距離が近づくのを感じました。
私は、その時間の中でふと思いました。
今まで着ていた衣類がどれだけ二人の距離を遠いものにしていたのか――そんなことを思うほど、心の距離が近づいていく感覚があったのです。
具体的なことを言わなくても、彼の触れ方は終始やさしくて、私が不安そうに息を止める瞬間さえ見逃さず、丁寧にほどいてくれました。
私は、今まで感じたことのない種類の快さに戸惑いながらも、逃げたくはなりませんでした。
大切に扱われると、人はこんなにも安心して委ねられるのだと知ってしまったからです。
私は全身で彼を受け止めながら、心の奥にあった乾いた場所が、静かに満たされていくのを感じていました。
客室露天風呂の湯気の中で、私は「戻りたくない」と思ってしまいました。
そのあと、私たちは一緒にお風呂に入りました。
露天風呂の湯気が夜の空気に溶けていくのを眺めながら、私は言葉にならない幸福を抱えました。
外の世界では、私はいつも「妻」を演じて、家庭の空気を守るために自分を小さく畳んできました。
でもここでは、演じなくていいのです。
温度も、呼吸も、沈黙の間も、私のままでいい。
湯船につかりながら、私はこのまま時間が止まればいいのに、と一瞬だけ思いました。
幸せが大きいほど、終わりが怖くなる癖がある私にとって、その夜は「怖いくらい幸せ」でした。
レストランでお酒を飲みながら食べた夕食が、私の人生を静かに変えました。
ホテルのレストランでお酒を飲みながら夕食を食べた時間も、忘れられません。
料理の味ももちろん美味しかったのに、それ以上に、隣に彼がいて、私の表情を見て、私の言葉を受け止めてくれることが嬉しかったのです。
「美味しいね」と言うだけで、彼は笑ってうなずき、私が少し照れると、冗談で場を柔らかくしてくれる。
私はそれだけで、胸の奥が満たされていきました。
夫との旅行では、同じ食事をしても、心の中心が動かないことが多かったのに、彼といると、同じ“食べる”がこんなにも輝くのだと知りました。
この上ない幸せを噛み締めながら、彼との旅行の一日目が、静かに終わっていきました。
眠りにつく前、私は「この幸せを失いたくない」と思っていました。
部屋に戻って灯りを落とす頃、私は彼の横顔を見ながら、胸の中がきゅっとなりました。
明日も一緒にいられるのに、もう今この瞬間が愛おしくて、終わりを先取りしてしまいそうになるのです。
私は自分が溺れていくのを感じています。
けれど、その溺れは破滅への衝動というより、「私は大切にされていい」と思える感覚に沈んでいくような、静かな落下でした。
夫の前では守れなかった私の境界線を、彼の前では守れる。
その安心が私をほどき、私はまた彼の温度に寄り添いながら、二日目の朝を迎える準備をしていました。

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